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エピローグ

わたしはオフィーリア

魂の抜けきった

ただの物質と化した

わたしの体は

夜を横切る小川の流れに乗って

あなたの部屋へと参ります


過去のわたしの魂は

麻薬に蝕まれたように

愛を渇望しておりました

グラスの中のレモン水に愛を

壁に貼られた肖像画に愛を

テレビの中の殺人鬼に愛を

フィリピン人労働者に愛を

街路に座り込む男たちのひやかしに愛を

契約書に愛を

札幌行の航空券に愛を

何が何でも

愛でなければならなかったのです


この愛を求めて已まない魂を断罪し

ここにわが身を見放しました

芸術家は

魂が無ければ生きてはゆけないのです


魂の無いわたしの体を

あなたのベッドに横たえてください

過去にあなたとわたしが紡いできた

会話の数々

すべてがチャラになりましょうから

そのときあなたは初めて

わたしの姿に気づくでしょう

そして

「愛しい人」

と言ってください

もう何のしがらみもないのですから


あなたのベッドに横たえてくれたなら

わたしの体はさらさらと相好を崩し

光の粉を振り撒きながら

あなたの眼の中の幻覚に変容します


わたしが魚に見えたのなら

釣り船を頼んで

館山の海に送ってください

わたしが小鳥に見えたのなら

朝が来たときに

奥武蔵の里山に送ってください

そして

「終わった」

と言ってください


魚になって海に沈めば

仲間たちと一緒に群舞するでしょう

小鳥となって空に舞ったなら

幾百年と囀り続けます

だから

オフィーリア

魂を失った女