偏頭痛 サプリ

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小桜町はここ西出市から電車で四十分ほど北に行った町で、商業中心街を持つ西出市からは、「裏」の位置にある。僕たちはめったなことで小桜町へ行くことはない。 そんな僕たちだけれど、おかあさんは、今度の三月一日の日曜日、小桜町へ行こうと言ったのだった。小桜町は、吊るしびな祭りをやっていて、町のいたるところで吊るしびなを飾っているのだ。けっこう有名で、「裏」の小桜町でも、この時期にはよそからのお客さんがたくさん来るらしい。

「おひな様か・・・。」

ひな祭りは女の子のお節句で、お姉さんも妹もいない僕にはまったく縁のないお祭り。気乗りはしなかった。でも、いやとは言えないふんいき。

「深浅ちゃんも連れて行くんだ。」

おかあさんは張り切っていた。

深浅ちゃんとは、僕と同学年の五年一組の高野深浅。家が近いのだ。クラスは一緒になったことはない。家が近いからおかあさん同士知り合いで、でも、深浅ちゃんのおかあさんは働いているので、仲がいいほどではない。

「女の子のお節句でしょ?」

「一緒に行ったら、帰りに駅前でNゲージ買ってあげる。」

「うーーん。北陸新幹線って言ってもいい?」

「オーライだ。」



高野深浅はおとなしい少女で、勉強はできるほうらしいけれど、発表会や音楽会で目立つこともない。字が上手くて、お習字はいつも張り出されている。クラスの中心グループに入ることはないらしく、なんか存在がひっそりした感じ。

なぜかは知らないけれどお父さんはいなかった。小学校三年生の時西出市の僕の町に引っ越してきて、そう、転校生だった。西出市は深浅ちゃんのおかあさんが働く会社があるのだ、という話を聞いたことがある。

おかあさんは、なにかと気にかけていた。深浅ちゃんのおかあさんは町会などには参加しないので、回覧板を持っていったり、町会のイベントに誘ったり。

転校当時は、おかあさんから、

「一緒に登校しなさい。」

と言われて、毎朝深浅ちゃんのアパートまで迎えに行ったものだ。でもこのところ、そう五年生の四月頃から迎えに行くこともなくなった。深浅ちゃんの風邪だか欠席だかがきっかけて、なんとなく一緒に通うことはなくなったんだ。

いじめられている、というようなことはなかった。でも深浅ちゃんはいつも自信なさげだった。うつむきがちで、ネクラな子だった。

「深浅ちゃん、喜ぶだろうか。」

感情をあまり出さない深浅ちゃんは、何考えているか判らないから、おかあさん困るんじゃないかな。今度の小桜町は成功するといいけどな。僕は気を使っていたわけだ。